歯を失ってしまったときの、選択肢のひとつが「インプラント」です
歯を失ってしまった場合、そのまま放置すると咀嚼力や見た目の問題だけでなく、かみ合わせのバランス崩壊や周囲の歯の移動など、口腔内全体の健康に大きな影響を及ぼします。
失った歯の機能と審美性を回復する方法として、従来は「入れ歯」や「ブリッジ」が選択肢とされてきましたが、近年最も注目され、かつ医療的に有効な方法が『インプラント治療』です。
インプラントの基本構造
インプラントは、大きく分けて以下の3つのパーツから構成されています。
- インプラント体(人工歯根):顎の骨に埋め込む、主にチタン製のネジ状の構造体。骨と結合します。
- アバットメント:インプラント体と被せ物を連結する中間部。
- 上部構造(被せ物):ジルコニアやセラミックなどで作られる人工の歯の部分。
これらが一体となって、天然歯に近い見た目と機能を再現するのが、インプラント治療の大きな特徴です。
ブリッジ・入れ歯との違い
歯を失った際の主な治療方法には、以下の3つがあります。
比較項目 | インプラント | ブリッジ | 入れ歯 |
---|---|---|---|
見た目 | ◎ 自然で違和感なし | ◯ 両隣の歯次第 | △ バネが見えることも |
噛む力 | ◎ 80〜90%回復 | ◯ 60〜70% | △ 30〜40% |
周囲の歯への影響 | ◎ 削らない | △ 健康な歯を削る | △ 支えの歯に負担 |
骨の吸収 | ◎ 骨に刺激が残る | × 防げない | × 加速する可能性あり |
違和感 | ◎ ほぼなし | ◯ 少ない | △ あり |
寿命 | ◎ 10年以上(メンテ次第) | △ 5〜7年程度 | △ 劣化・再製が必要 |
→ 将来の口腔内の健康を見据えた選択肢として、インプラントは非常に有効です。
インプラント治療のステップ
- カウンセリング・相談:不安・希望のヒアリング
- 精密検査:歯科用CT、口腔内スキャン、かみ合わせ診査など
- 治療計画の立案・説明:複数の治療案と費用提示
- 手術(インプラント埋入):通常1〜2時間前後
- 治癒期間(2〜6ヶ月):骨と結合を待つ
- 被せ物の装着:ジルコニアなどの補綴物
- 定期的なメインテナンス
骨と結合するメカニズム「オッセオインテグレーション」
インプラントの画期的な点は、チタンが骨と直接結合(オッセオインテグレーション)する性質にあります。
チタンは生体親和性が高く、拒絶反応が少ない金属。これにより、人工歯根が天然歯と同様に安定して顎に固定されるのです。
この仕組みのおかげで、強い咬合力と長期的な耐久性が実現されるのが、インプラント治療の真価といえるでしょう。
インプラントの寿命と長期安定性
インプラントは「一生もの」ではありませんが、適切なメインテナンスを行えば10年、20年と長期にわたって使用可能です。
実際、海外の研究では、以下のような長期成績が報告されています。
- 10年生存率:約95〜97%(Brånemark法による報告)
- 15年生存率:約90%以上(文献により異なる)
当院では、術後のインプラント周囲炎の予防と、噛み合わせのコントロールを徹底し、
「長持ちするインプラント」を実現しています。
海外のエビデンスと現代のスタンダード
インプラント治療は1960年代にスウェーデンで確立され、現在では世界中の歯科大学・研究機関で高い成功率が実証された治療法です。
アメリカ・ヨーロッパを中心に、ブリッジや入れ歯よりも長期予後が良好という研究が相次いで報告されています。
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- 参考文献
- Albrektsson T, Brånemark PI, Hansson HA, Lindström J. (1981).
- Lindhe J, Meyle J. (2008). Peri-implant diseases. Consensus report of the Sixth European Workshop on Periodontology.
インプラントは“歯の見た目と機能”を再建する医療です
インプラント治療は、単に「歯が入る」治療ではありません。
自分の歯と同じように噛めること。自然に笑えること。健康な人生を取り戻すこと。
そのための医療です。
- 周囲の歯を削りたくない方
- 入れ歯に不満がある方
- 見た目や食事のストレスをなくしたい方
- 将来を見据えた選択をしたい方
そんな方には、インプラント治療は理にかなった選択肢といえるでしょう。
まずは、CT診断とカウンセリングからお気軽にご相談ください。