インプラントを支える「骨」が足りない場合の選択肢
上顎の奥歯(上顎臼歯部)は、歯が抜けた状態が長期間続くと、骨が吸収されて薄くなる傾向があります。
さらに、上顎には「上顎洞(サイナス)」という空洞があり、骨の厚みが不足していると、インプラントを安全に埋め込むことが難しくなることも。
このような状況でもインプラント治療を実現する方法が、サイナスリフトとソケットリフトです。
どちらも上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げて、人工骨や自家骨を填入する「骨造成術」です。
サイナスリフトとソケットリフトの違い
項目 | サイナスリフト | ソケットリフト |
---|---|---|
骨の厚み | 3〜5mm未満の場合 | 4〜6mm程度あれば可 |
アプローチ方法 | 側方から開窓 | 歯があった部位から上方にアクセス |
手術の侵襲性 | やや大きめ | 小さめ(低侵襲) |
インプラント同時埋入 | 状況によっては不可(遅延埋入) | 多くのケースで同時埋入可 |
適応範囲 | 広範囲な骨欠損・多数歯欠損 | 少数歯・局所的な欠損 |
▶ どちらの術式が適切かは、CT検査による骨量測定と、上顎洞の状態評価によって決定します。
サイナスリフトとは
サイナスリフトは、上顎の横からアプローチし、上顎洞の底をリフトアップして人工骨を填入する術式です。
骨の高さが著しく不足している場合や、インプラント複数本を支える必要がある場合に選択されます。
手術の流れ
- 側方から骨に小さな窓(開窓)を形成
- 上顎洞の粘膜を慎重に剥離・挙上
- 空いたスペースに人工骨を填入
- 必要に応じて、インプラント埋入(または後日)
▶ 歯科用CTで上顎洞の形状や粘膜の状態を詳細に把握することが不可欠です。
ソケットリフトとは
ソケットリフトは、抜歯した穴から垂直方向にアプローチし、上顎洞の底を少しだけ押し上げて骨造成を行う方法です。
少ない骨造成で済むため、患者さまの負担が軽く、1〜2本のインプラントに適しています。
手術の流れ
- 抜歯窩(またはインプラント埋入部)から器具で慎重に上顎洞底を押し上げ
- 生理食塩水や人工骨を使用して骨造成
- そのままインプラント体を埋入
▶ サイナスリフトに比べて低侵襲・短時間で終了する点が特徴です。
当院の骨造成術の特徴
■ 歯科用CTと3Dシミュレーションによる事前診断
骨の厚み・幅・上顎洞の位置を0.1mm単位で計測し、骨造成の必要性・安全性・術式選択を科学的に判断します。
■ ガイドを使用した手術
インプラント埋入と同時に骨造成を行うケースでは、ガイドを用いた手術により、上顎洞の損傷リスクを極小化します。
■ 高性能人工骨材を採用
- β-TCPやハイドロキシアパタイトなど、実績ある国際基準の人工骨材を採用
- 患者さまの状態により、自家骨や混合材で対応する場合もあります
費用について
項目 | 費用(税込) |
---|---|
ソケットリフト(1部位) | 約55,000〜77,000円 |
サイナスリフト(片側) | 約165,000〜220,000円 |
骨造成に使用する材料費 含む(症例により追加費用あり)
▶ 骨造成はインプラントの安全性・長期安定性に直結する重要な処置です。
▶ 医療費控除の対象となる場合があります。
リスク・注意点
- 上顎洞膜(シュナイダー膜)の穿孔リスク
- 術後に腫れや違和感を伴うことがあります
- 感染や骨造成の不成功により再手術が必要な場合あり
▶ 当院では術前に十分な説明と同意を徹底し、リスクを最小限に抑える体制を整えています。
「骨が足りない=できない」ではありません
「インプラントは無理かもしれない」と言われた方でも、骨造成術を併用することで安全な治療が可能になるケースが多くあります。
まずは歯科用CTによる診断と、セカンドオピニオン相談をおすすめします。
インプラントを諦める前に、当院の高度骨造成技術をご相談ください。